雨は君に降り注ぐ


 その予想は、見事に的中した。
 新川先輩と高井先輩は、そこにいた。

 ただ、そこにいたのは、2人だけではなかった。

 新川先輩を含めてバスケサークルの女子が4人、高井先輩を取り囲むようにして立っている。

 中央にいる高井先輩は、地面にうずくまっている。
 その体は、頭からつま先まで、びしょぬれだった。

 高井先輩のすぐそばに、彼女の物と思われるバッグが落ちていた。
 女子の1人が、その中から財布を取り出し、お金を抜き取る。

「思ったより持ってるじゃない。あんたには相応しくない金額ね。」

 新川先輩の冷たい声が、離れたところにいる私の耳にも届いた。

「やめてぇっ!」

 高井先輩が叫んで、財布を取り返そうと、女子の1人に手を伸ばす。

「気持ち悪いっ!」

 その手を、新川先輩が踏みつけた。

 もう、これ以上は、見ていられない。

「ちょっと、何してんの?!」

 考えるよりも前に、そう叫んでいた。
 隣の理子が驚いたような表情をしていたけど、この際、考えてなんていられるか。

 新川先輩が、ゆっくりとこちらを振り返る。
 冷ややかな視線が、私をつらぬいた。

 そう、この目。
 新川先輩の、つくった笑顔の奥に隠されていた、この目。

 これが、本当の、新川先輩。