雨は君に降り注ぐ


 勢いで体育館を飛び出してきたが、2人は今、一体どこにいるのだろう。

 きっとどこか、人目につかない所。
 多分、大学の敷地内だ。

 大学の外だと、人目に付く可能性がある。
 今は夏休み。
 大学内の学生の出入りは、まばらだ。

 新川先輩と高井先輩は、必ず大学の敷地内にいる。

 どこだ。
 大学内でも特に人目の少ない、夏休みには誰も立ち寄りやしない、何をしていても見つからない、そんな都合のいい場所…。

「あっ…。」

 あるじゃないか。
 ある1人を除いては誰も立ち寄らない、都合のいい場所が。

「理子っ、分かった!」
「は、何が?」
「新川先輩たちがいる場所っ。」

 そう、あそこだ。

「中庭!」



 一ノ瀬先輩は、基本、講義をサボる時には中庭に向かう。
 その理由は、聞かなくてもよく分かる。

 中庭には、誰も立ち寄ろうとしないからだ。

 青葉の中庭は、あまり評判がよろしくない。

 雑草なんて生え放題だし、女子が嫌う気持ち悪い虫も、たくさん潜んでいる。
 面積は恐ろしいほど狭く、バスケットゴールも無ければ、テニスコートも無い。
 中庭の中央に、申し訳程度に小さいベンチが1つあるだけだ。

 ただ、日当たりだけは、きっとどこの大学にも劣りはしない。

 一ノ瀬先輩はたぶん、そういうところを気に入ったんだと思う。

 そして、今は夏休み。
 サボることがほとんど趣味になっている一ノ瀬先輩は、わざわざ夏休みに大学を訪れることなど、天地がひっくり返ってもあり得ないだろう。

 つまり、今現在、中庭は無人だ。
 誰の目も届いていない。

 新川先輩は、絶対そこにいる。