雨は君に降り注ぐ


 …ああ、涼しい。
 ここは天国だろうか。

「そんなわけないでしょ。ただのコンビニよ。」

 理子が、アイスをくわえながら、ツッコミを入れる。

 それにしても、涼しい。
 さすがコンビニのイートイン。
 クーラーがちょうどよく効いている。

「理子の家も、クーラー買ってないの?」
「あ~違う違う。家は、昨日ぶっ壊れたの。」

 当然だ。
 まさか、あの豪邸を持っているにもかかわらず、クーラーを買っていないなんて、それはさすがに考えにくい。

「ね、結希って、今日この後暇?」
「え?う、うん、まあ…。」
「じゃあさ、この後、暇つぶしにサークル行かない?」

 そういえば、ここ1週間くらい、サークルには顔を出していない。
 高井先輩との1件があって気まずいから、というわけではない。

 なぜ、こんなにも暑い中、なぜわざわざ汗を流すようなことをしなくてはならないのか。
 夏休みにバスケなんて、やりたくない。

 とは言うものの、高井先輩のことも、心のどこかで気にしている。

 あれから、高井先輩に拒絶されてから、1週間と少し。

 今、高井先輩は、どうしているのだろう。
 相変わらず、毎日体育館に通っているのだろうか。
 新川先輩とは、どうしているのだろうか。

 バスケサークルに行けば、それらすべてのことを確認できるのだろうか。

「…いいよ。行こっか、サークル。」

 あの照りつける太陽の下に再び足を踏み出すのは、なかなか勇気がいる。
 私は、重い足を引きずるようにして、コンビニを後にした。