高井先輩が泣き止むまで、たっぷり15分かかった。
つられて私も泣いてしまい、やっと話を始められるくらい落ち着いたのは、高井先輩が泣き止んだ10分後だった。
「…で、助けてほしいってのは?」
理子の質問は、相変わらずド直球だ。
「そのままの意味ですぅ…。もう、限界が近くってぇ。」
「何があったか、順番に聞かせてもらえますか?」
私の問いに、高井先輩は、力なくうなずいた。
「あたしぃ、バスケサークルに入ったばかりから、新川さんに目ぇつけられたんですぅ。その原因は、あたしぃ、その…ぶりっ子みたいなところがあるじゃないですかぁ。」
理子が、激しくうなずく。
「多分それも気に入らなかったんだと思うしぃ、あとぉ、もう1つの原因は、颯真くんのことなんですぅ。」
「ソウマ……?」
颯真、と聞いて、私は一瞬、誰のことか理解できなかった。
彼を下の名前で呼ぶ機会なんてないし、みんな、上の名前で呼んでいるし。
「あれ、吉岡さんも知ってますよねぇ?工藤颯真くん。」
「ああ!うん、知ってます。」
そうだった。
彼の名前は、颯真だった。……ような気がする。
正直、よく覚えていない。
「で、工藤くんがどうしたの?」
理子が、私の疑問を代弁してくれる。
「あたしと颯真くん、高校からの同期なんですよぉ。それでぇ、颯真くんとは結構仲がいいんですけどぉ、って言っても、ただの友達ですよぉ?」
ただの友達とは、とうてい思えない。
私がバスケサークルに入ったばかりの頃、工藤くんを通して、高井先輩に自己紹介をされた。
その時の、高井先輩の工藤くんを見つめる目は、『ただの友達』に向けられる視線の類ではなかった。
間違いない。
高井先輩は、工藤くんに恋をしている。

