「仁菜ちゃんは、楓とは違って、周りからの評判は高い。優等生の鏡ってかんじで、教師受けもいいし、男子からもモテる。」
「何それ。」
自分でも驚くくらい、まぬけな声が出た。
「全然悪いところ、ないじゃん。」
理子は、真顔でうなずく。
「そうなのよ。仁菜ちゃんことをいくら聞いて回っても、悪い話なんて少しも出てこない。そこでうちは、視点を変えて、……青葉大学を退学したって人に、会いに行くことにした。」
今の私はきっと、これ以上ないくらいまぬけな顔をしているに違いない。
なんだそれは。
一体どうやって、退学した人の居場所なんて突き止めたんだ。
理子の情報網って、どれだけ広いんだ。
疑問はたくさん浮かんだが、今はそれを押さえ込み、理子の話を集中して聞くことにした。
「在学中にバスケサ~クル所属で、退学した人を探すのって、結構大変だったんだけど、何とか1人見つけて、その人に、昨日会ってきた。」
…どんな手を使って会ってきたのよ。
「野崎さんって人なんだけど、去年まで、青葉に在学してたんだって。3年に進学する直前に、退学したらしい。」
ということは、新川先輩と同い年だ。
「率直に退学理由を聞いたら、びっくりするほどあっさり答えてくれたんだ。…いじめに耐えられなくなって、やめたんだって。じゃあ、誰にいじめられていたのか。その質問にも、野崎さんはあっさり答えてくれた。…自分をいじめていたのは、」
話の先が見えてきた。
私の心臓が、とびきり早いビートを刻んでいる。
興奮している。
「新川仁菜、だってね。」

