理子とは、大学校内の学食で会うことになった。

 夏休みの夕方。
 当然だが、学食には、私と理子しかいなかった。

 理子は、4人掛けのテーブル席に座ると、コンビニのレジ袋を広げる。
 中から、大量のジュースが出てくる。

 前も思ったのだが、理子の小さな体の一体どこに、これだけのジュースを持てる腕力が隠されているのだろうか。

「あとで、サ~クルの皆にも配るから。とりあえず、結希が1本選んで。」

 理子に言われるがまま、私は乳酸菌飲料のペットボトルを手に取る。

 でも今は、ジュースなど飲んでいる場合ではない。
 それよりも、気になることがある。

「何か分かったの?」
「まあね。」

 理子は、サイダーを喉に流し込みながら、のんびり応える。

「私の知り合いのツテをたどって、例の2人について聞き込みをしてみたんだけど。」

 私は、思わず身を乗り出す。

「楓は、周りからの評判はそこまで良くない。どちらかというと、悪い。ぶりっ子の影響か、男子からの評価は高いけど、女子の友達は1人もいない。ただ、元は悪い子じゃあないから、いじめとか、そういうのには発展しにくそうだけど。」

 なんとなく分かる気がする。

 高井先輩は、ぶりっ子口調のせいもあって、一見キツそうな人に見えるが、『悪い人』というオーラは感じられない。

 むしろ、『優しい人』にも見える。

「で、次は、問題の仁菜ちゃんね。」

 理子の声が、急に真剣になる。
 私は思わず、ゴクリと喉を鳴らした。