数10分後、私と理子は、高井先輩の前に立っていた。
 場所は、女子更衣室の、高井先輩のロッカーの前。

 理子には、高井先輩のこと、バスケサークルのこと、すべて話した。

 理子を、理子とは何の関係もない問題に巻き込んでしまって、申し訳ないという気持ちはある。
 しかし、この場で、理子が隣にいてくれていることが、私には何よりも心強かった。

 更衣室で、高井先輩は、すっかり着替えを終え、これから練習へ向かうところのようだった。
 そこを無理やり引き留め、強引に更衣室に3人きりの状況をつくってしまったからか、高井先輩は不機嫌そうだった。

「何の用よぉ?」

 声にも、イライラが表れている。

 さて、この場合、何と切り出したらよいのか。
 率直に疑問をぶつけるのは失礼だと思うし、遠回しに質問するのも逆効果な気がする。

 私が必死になって言葉を探していると、それを見かねたのか、理子が口を開いた。

「楓さん、このサ~クルの噂って知ってます?」

 私は、度肝を抜いた。

 あまりに直球すぎる。
 しかも、いきなり名前呼び。

「知ってるけどぉ?」

 私が1人で焦っていると、高井先輩は、意外にもあっさりと答えた。

「いじめがある、って話でしょぉ?」
「話が早い。じゃあ、なんでうちが、こんな質問を持ちかけてるか、分かる?」
「まるで、尋問ねぇ。」

 高井先輩が、鼻で笑う。

 確かに、尋問みたいだ。
 理子の声が、妙にトゲを持っている。

「さあねぇ。小澤さんはマネージャーだしぃ、噂の真相を確かめようとでもしてるんじゃないのぉ?」