自殺。
 そのワードは、大きな影響力を持っている。

 なんとなく分かってはいたものの、私は驚きを隠しきれなかった。

 まさか、青葉大学のサークルが原因で。
 それも、自分の所属しているサークルが原因で。
 命を絶ってしまう人がいるなんて。

「噂、だからね?」

 一ノ瀬先輩が、呆然としてしまっている私を気遣って、言う。
 私は、力なくうなずいた。

「でも…、その噂は、信憑性は…高いと、思います。」

 震える声でそう言った。
 先輩が、眉をひそめる。

「それはつまり、心当たりがあるの?」
「はい…。」

 私は、弱弱しく言う。

 そう、心当たりがあるのだ。

 涼介先輩も知らない、影のリーダー格の人物。
 気に入らない人をいじめ、自殺にまで追い込んでしまう人物。

 その人物のことを、私はよく知っている。
 確信がある。

「これから、どうするつもり?」

 一ノ瀬先輩が、優しく聞く。

「それは、どういう…。」
「心当たりがあるんでしょ、その人に。そのことを確かめるために、決定的な確信を持つために、僕に会いに来た。違う?」

 すごい。
 完全に、心を読まれている。

「その顔は、確信を持ったって顔だよね。君は、この噂が本当のことだと気づいた。その事実を知って、君はこれから、どうするつもり?」

 私は、少し考える。

 この事実を知って、私にできること。
 私がやらねばならないこと。

「…終わらせます。」

 私は、小さい声で、それでも力強い声で、言った。

「いじめを、バスケサークルから、消し去ります。」