その日の講義が全て終わり、私は、いつも通り体育館へと向かう。
いつもと違う事といえば、隣に理子がいないことだ。
あの後、私と理子の間には、何とも言えない気まずい空気が流れてしまった。
お互いに話しかけることができないまま、今に至る、というわけである。
理子は、私のことをどう思っただろう。
『気持ち悪い。』
そう思ったりしただろうか。
そう思われても、仕方のないものだ。
何の前触れも無くいきなり泣き出すなんて、おかしいよね。
もしかしたら、これがきっかけで、私はもう2度と、理子と話すことができなくなってしまうかもしれない。
それは、絶対に嫌だ、けど、
仕方のないことなのかな…。
そんなことを考えていたら、いつの間にか、体育館の前まで来ていた。
中に入ると、涼介先輩の整った笑顔が、まっ先に目に飛び込んできた。
「やあ、吉岡さん。」
そう言って、片手を上げてみせる。
非の打ち所のない、完璧なポーズだ。
「あの、涼介先輩。理子ってもう来てます?」
「小澤さん?今日は休むって、さっき連絡あったけど。」
連絡があった?
もう、連絡先を交換しているのか?
「昨日は、彼女に迷惑をかけっぱなしだったからね。疲れたんだと思うよ。」
「ああ、涼介先輩、もう大丈夫なんですか?」
「何が?……ああ、僕、二日酔いはしないタイプなんだ。強いから。」
でも、昨日は普通に酔ってたじゃないですか。
もちろん、そんなことは言わなかったが。
理子、休みか…。
昨日疲れたから、休んだ?
本当に、理由はそれだけ?
やっぱり、私のせいなの?

