「わ、私のファーストキス……」



まさかこんなところでするとは夢にも思わなかった。


誰にも見られてないか不安になって周りを見渡すけど、視線は全部前のイルカたちに注がれている。



……よ、よかったあ。



ふうっと息をついていると、瞬の頭が私の肩にこつんと当たる。



「……希帆だけじゃないんですけど」



拗ねたような、小さな声だった。

でも近くにいるからしっかり聞こえて。



「……えっ!?な、なんで……!?」



一瞬なんのことだろうと思ったけど、すぐにわかった。


モテモテなのに、あんなに自然にしてきたくせに……!



「……なに、俺は経験あるって思ってたの?誰とすんの、ずっと希帆のこと好きなのに」


「えっ!?や、そういうわけじゃなくて、えっと……!」



幼なじみ同士じゃしない、甘くてドキドキする会話が続く。


やっと瞬の恋人モードに慣れてきたと思ったのに、全然そんなことはなくて。



「イルカショー見ねえの?」

「なっ……!ひ、ひどいよ瞬!」



ドキドキしすぎて、イルカショーはほとんど見られなかった。


ずっと楽しみにしてたから、見れなくて悲しんでもおかしくはないのに。


幸せだからいっか、なんて思ってしまうあたり、やっぱり私も瞬のことが好きなのかもしれない。