「何があったんだよお前ら。
もう昨日から聞きたくて仕方なくて!」

「落ち着いてよ拓海さん。
……不運が重なってさ、もう開き直ることにした」



興奮気味の彼に、こうなった一部始終を話した。




「ダッハハッ!なんだよそれ、お前強運の持ち主だな!
きっとカミサマがお前らをくっつけようと必死なんだよ」



拓海さんは私の気持ちと知らず、腹を抱えて笑っている。



「笑わないでよ。私もまさかこんな巡り合わせがあるとは思ってなかったけど」

「もうこうなりゃ行雲流水(こううんりゅうすい)、身を任せて流されちまえよ」

「馬鹿言わないで。私が荒瀬組に受け入れてもらえるわけがない。
最悪この世から消される」

「もう万策尽きてるのに?」

「……」



黙りこくった私を見て、拓海さんはぽんぽんと頭を撫でた。



「ま、お前は色々考えすぎだ。
隠し通せばいいことを、素直に話そうとしてやがる。
真面目だねぇ。いつか言おうと思っていたが、お前は情報屋には向いてないよ。
根が優しいからな、こんな世の中でも腐りきれてねえんだ」

「でも、私はこの世界でしか生き方を知らない」

「そういうの縛られてるって言うんだよ。
『好きに生きろ』。夢なら笑ってそう言うよ」



ニッ、と笑う拓海さんのの目の奥は哀しみに満ちている。

その表情は、私に対して?

それとも……。

私は真意を探るのをやめ、深呼吸をしてから病室に戻った。