惚れたら最後。

「おれ、今日をすごく楽しみにしてたんだ。
琥珀とお出かけなんて久しぶりだったから。
でも、いっぱいワガママ言って困らせてごめんなさい」

「私こそ気がついてあげられなくてごめんね。
つらかったね、苦しかったね……もう大丈夫だよ。
とにかく今はいっぱい寝て、元気になってから流星の行きたい所に行こう。
もう我慢しなくていいからね」

「うん……」



流星は涙ながらに一生懸命謝ってくれた。

私の声を聞くと目をつぶりそして安らかに寝息を立て眠りについた。

その小さな頭を優しくなでて、頬に伝う涙を拭いてあげた。



「星奈、おいで。帰ろう」



流星から背を向け、星奈を連れて一旦帰宅しようと、妹を抱いてくれている憂雅の前に立つ。



「やだ……ユウガがいい。さっき本読んでくれるってやくそくしたもん……」



ところが星奈は寝ぼけながら憂雅にしがみついた。

すると彼は嬉しそうにニヤリと笑う。



「というわけでお姉さん、星奈を少し預からせていただくってことで」

「は?」

「いや、そんな怖い顔しないで……ください」

「どこに連れていくの?私の大事な妹を」



突拍子もないことを言う憂雅に思わず下から睨めつけると、彼は星奈をぎゅっと抱いたまま一歩後ろに下がった。



「離れ離れは嫌か?」

「当たり前だよ、ただでさえ流星が入院して環境が変わったって言うのに、変化に敏感な子どもを連れ回さないで。
せめて私が一緒にいてあげないと」

「そうか……じゃあ同じ空間ならいいか?」

「はあ、どうせ逃がさないっていうか、家には返してくれないだろうと思ったけど。
そうね、星奈といっしょならどこでもついて行くよ」

「分かった、なら行こう」



憂雅の横から口を挟んだ絆は、私の言葉にうなずくと手を握って移動を始めた。