惚れたら最後。

「頭部に異常はありませんが、A型のインフルエンザですね」

「え、インフルエンザ?」

「今年は例年より流行が早いんですよ。まだインフルエンザワクチンの予防接種は受けてないですか?」

「はい、11月下旬に行こうと思ってました」



さらにインフルエンザを発症していたと発覚した流星は、荒瀬組の厚意で念の為入院ということになった。

しかし私は分かっていた。

私を逃がさないようにあえて流星を入院させた、厚意という名の策略だと。



「よかったな、大事なくて」



流星を個室の病室に移動させ一段落したところ、絆に声をかけられた。

星奈は憂雅に抱っこされ、肩にもたれて寝息を立てている。

あの安心しきった寝顔……星奈はすっかり憂雅に懐いてしまったようだ。



「ありがとうございました。ご迷惑おかけしてすみません」

「別にいい、お前に出会えたから」



深深と頭を下げると間髪入れずに断言した絆。

顔を上げ、その漆黒の美しい瞳を見つめ、ずっと思っていた疑問を口にした。



「どうして私なの?」






「惚れた理由に理屈なんて必要か?」










「………え?」