惚れたら最後。

会場から数百メートル離れた人気のない道路沿いまで走り続けた。

最寄りの駅まではまだまだ距離がある。

仕方なく大通りの交差点を渡ろうとすると、交差点の手前で待ち構えていたかのように一台の黒いセダンが停まっていた。

この車、このナンバー……荒瀬組の所有する車だ。

しまった、回り込まれていた!

土地勘のない場所で、子どもを連れての逃走は絶望的だった。

車から逃れようと元来た道を戻り、暗い歩道橋の階段を駆け上がる。

半分ほど階段を登ったその時だ。



「え……?」



ふいに、しっかりとつないでいたはずの流星と手が離れた。

いや、流星が自ら後ろに体重をかけて手を放した。

振り返ると、まるでスローモーションのように頭から階段を落ちていく流星の姿があった。




「流星!!!」





急いで階段を駆け下りたが、間に合わなかった。