惚れたら最後。

しかし言葉とは裏腹にその目は、私が探していた女であると確信しているようだった。

言葉にはしなくとも『逃がさない』と伝わった。

焦った私は建物を出るや否や、人混みに紛れ双子を連れて走って逃げた。

一刻も早くこの会場から離れなければ。



「待って、早いよ。おれつかれた……」

「流星、頑張って。もうちょっとだから」



人混みをかきわけ、入り組んだ会場の出入口に差しかった。

後ろから誰も追ってきてないと確認し安心したのもつかの間、出入口付近に立っていた黒服の男に行方を阻まれた。

耳にはインカムが装着されている。

……こいつも荒瀬組の連中か。



「失礼、あなた方はこちらで待機するようにとのことです。
……乱暴な真似はしたくないのでついてきてください」



もう逃げ場がない、そんな危機的な状況を救ったのは星奈だった。



「いやぁぁ!助けてぇ!!」



突然、割れんばかりの大声で星奈が叫び声をあげる。

星奈の渾身の演技に何事かと周りの大人たちが注目した。



「はぁ!?おい、何して……あ、いや違うんですこれは……」



思いもよらぬ行動に、注目されていることに気がついた男は慌てふためいて周りに弁解をした。

私たちはその隙に逃げ出した。