そんな色っぽい目を向けられて困る。

この男に選ばれるなんて思ってなかったから。

辺りを見渡すと女性客がこっちを見ながらヒソヒソ話している。

まずい、目立つことは避けたいのに。



「あの、ごめんなさい。
私そういう目的でこのお店に入ったわけじゃないんです」

「は?」

「実は、その……ストーカー、されてて」

「ストーカー?客にか?」

「それがよく分からないんです。でも、今日も仕事帰りに尾けてくる気配と足音を聞いて……怖くて近くのお店に駆け込んだら、たまたまこのお店だったんです」

「……だったら今帰るのは危ねえだろ」

「いえ、職場のドライバーさんが拾ってくれるそうなので、大丈夫です」

「じゃあ外まで送ってやる」

「そんな、結構です!とんでもない」



とっさに口から出任せを言って、苦し紛れの嘘だったがなんとか信じてくれた。

それよりこの男、なんでこんなにぐいぐい迫ってくるの?

おかしい、噂ではこんな派手なドレスを着た女は抱かないと聞いたからあえて選んだのに。



「あ、外で待ってるそうなので、私もう帰ります」



困った私は彼に見えないよう、カウンター席の下でスマホと連動しているスマートウォッチを操作した。

そしてたった今電話がかかってきたようにバイブレーションをかけ、席を立った。