「えっ?」


まるで気配がなかったため、変な声が出た。

驚いて振り返りその声の正体を確かめる。

そして、絶句した。

その男が、私にとって最も関わりたくない人物だったから。


透明感のある滑らかな肌。色素が抜けたような灰色混じったサラサラの茶色の髪。

シュッとした形のいい眉、鼻筋の通った目鼻立ち。

長いまつ毛に、ハッキリとした二重まぶた、その中心で恐ろしいほど輝きを放つ漆黒の瞳。

血色のいい色っぽい唇は、声を発するために今開かれたところだった。



「どうした?お前に話しかけてんだけど。なんか言えよ」

「あ、どうぞ」



色気を漂わせるよく通る声は、その気がなくてもすんなり返事してしまった。

……って、馬鹿。どうぞじゃない!

さっさと帰らないと"あの子たち"が心配するのに。

いくら今の発言を取り消したくても、もうダメだ。

はっとすると、男は右隣の席に座ったところだった。