惚れたら最後。

「そうか、俺の事よく知ってるんだな。
とりあえず敵意がないのは分かった。
少し物事に無頓着な傾向があるが、自分の意思はある。
ポーカーフェースで冷静沈着だがイレギュラーに弱い。
あとお前純日本人じゃないな。
俺がお前を分析した感じこんなところだ。当たってるか?」

「第六感が鋭いって本当なんですね。敵意がないと思われたってことは『白』の判断を下していただけたみたいですね」

「いいや、まだグレーだ。
白の判定が欲しけりゃお前の情報をくれ」



荒瀬絆は祖母から第六感の鋭さを受け継ぎ、瞬時に相手を白か黒か判断できると聞いていた。

それにしてもここまで的確に性格を当てられるなんて。

どこぞのメンタリストもびっくりだ。



「……私の名前は琥珀です。名字は伏せておきます」

「今度こそ本名だろうな?」

「3度目の正直ですよ。安心してください」



本名を教えると噛み締めるように「琥珀…」と呟いて嬉しそうだった。

名前ひとつでこんなに喜ぶなんて、変なの。



「じゃあ琥珀って呼ぶからお前も俺のこと絆って呼べよ。
あと敬語じゃなくていいから」

「酔ってます?あなたは“日本二大勢力”の暴力団の若頭ですよ?
それに引替え、私はただの一般人です。馴れ馴れしくしてたら私だって───」

「そういうお前は本当に“ただの”一般人か?」



嬉しそうな感情はどこにいったのか声のトーンを落として、再び恐怖に陥れるような表情を浮かべる。

優しくしたと見せかけて冷酷に扱い、最後は捨てる。

そうだ、ヤクザとは卑劣なことを簡単にしでかす連中だ、忘れてはいけない。

解け始めていた琥珀の警戒心は振り出しに戻った。