「出会った頃は惚れたら最後、なんて思ってたのに」



呟いて、あながち間違いではないと思った。

絆と出会ってから、愛というぬくもりの中でずっと溺れている、そんな感覚。

そのぬくもりは決して私を離そうとしてくれない。



「は?なんだそれ」

「好きになったらまともな思考を奪われて逃げられないって……なんとなくの直感。
それだけ絆は謎めいて危険で、魅力的だった」

「だから惚れたら最後って?」

「うん」



私の髪を指先で遊ぶように触れる絆。

その仕草にすら妖艶さがあって目が離せない。



「やっぱりそう思ってたんだな。
執念深く琥珀を追いかけてよかった」

「必死すぎてちょっと怖かったけどね」

「それだけ当時から本気だったんだろうな」



懐かしむように笑う絆の顔は本当に綺麗。

ただ、出会った頃の少年っぽさが残ったあの笑顔も好きだった。

ふと、『好きだった』と過去形になってしまうくらい時間が流れたんだと感じて驚いた。



「でも、琥珀が結果的に俺を選んでくれて良かった」



絆は私の目を正面から覗き込むと、一層笑みを深めて白い歯を見せた。