惚れたら最後。

「なんて、琥珀とふたりきりでいたいための口実だけどさ。
来るなって言ったけど誰かと会いたかった?」



絆は己の独占欲に苦笑いしながら私の瞳を見つめる。



「ううん、それでいいよ。さすがにこんな顔見られたら心配されちゃう。
特に星奈は優しいから号泣すると思う」

「流星は?」

「『その傷どうなってるの?縫ったの?』って興味津々に聞いてくると思う」

「さすが琥珀の弟。肝座ってんな」

「うん、あの子は大物になると思うよ」



姉バカを発揮する私に、絆はこらえ切れないといった様子で肩を震わせ笑った。

ひとしきり笑うと、彼は優しい表情でこう言った。



「こうして琥珀と何事もなく語り合えるようになって嬉しい」

「……私もようやく、肩の荷が下りたよ。
後は大学合格してたらいいな」

「落ちてたら結婚しよう?」

「うん………え?」




聞き間違いだよね?と二度見した。

しかし当の本人はきょとんとした顔をして「聞こえなかったか?」と聞き返してきた。

どうやら聞き間違いじゃないらしい。