惚れたら最後。

「重荷を背負わせて組長として不甲斐ない。
お前の弟妹は俺たちが責任をもって面倒を見るからゆっくり療養するといい。
たったひとりでよく頑張った」



彼は一語一句噛み締めるように言ったあと、ぷいっと顔を背けて部屋を出ていこうとした。



「ありがとう、ございます……」



すごく怖い顔をするものだから何かと構えたけど褒められて拍子抜けした。

彼はそのまま部屋を出ていき病室はシン、となった。



「初めて見た……」



沈黙を破ったのは絆だった。



「何が?」

「親父が身内以外の人間を褒めるところ」

「え?そんなわけないでしょ」

「いや、親父は基本的に褒めて伸ばすタイプじゃねえから。
どっちかというと気に入ったやつほどちょっかいかけるタイプ。
母さんにひねくれてるって言われてるくらいだし」

「ははっ、そうなの?」



もしかしてさっき怖い顔をしたのは、実は褒めるのが恥ずかしかったのかもしれない。

そう思うと笑いが込み上げてきた。

が、すぐに笑うのをやめて口を手で押えた。



「どうした?」

「笑った顔見ないで……」

「なんでだ」

「歯が抜けて間抜けなツラしてるから」

「そんなこと気にすんな。どんなお前も可愛いよ」

「よくそんな歯の浮くようなセリフを……」

「俺はいつだって本気だ」



ふざけてるのかと思ったらドヤ顔でそう言われたものだから、今度は私が恥ずかしくなった。