惚れたら最後。

「自分を犠牲に、ねぇ。
なんだお前、壱華にそっくりじゃねえか」

「親父!?」



その声に驚き辺りを見回すと、なんとドアの前に荒瀬志勇が立っていた。

絆は驚いて立ち上がって大声を上げ、歩み寄ってくる父親を見つめていた。

彼は絆を一瞥すると私の正面に立った。



「話は聞かせてもらったぞ。
ったく無茶しやがって、ヤクザ相手に交渉なんざ、一歩間違えたら死んでたからな」

「……申し訳ありませんでした」

「勝手にひとりで突っ走りやがって。
壱華と正反対な冷徹な女だと思ったが、よく似てやがる」



ベッドに座ったまま頭を下げた。

何をしに来たんだろう。

彼がわざわざ息子の彼女を見舞いに来るなんてそんなはずはない。



「その程度の怪我で済んでよかったな。
しっかり療養してから帰ってこい。その顔じゃ外も出歩けねえだろ」

「……はい」



真意が見えなくて目を泳がせていると絆が間に割って入った。



「親父……」

「絆、なんつー情けねえ顔してんだ。
安心しろ、俺はジジイみたいに息子の唯一を追い出そうなんてマネは絶対しねえよ」

「じゃあ、なぜここに?」

「事実確認に来ただけだ。さすがに俺の前じゃ嘘なんてつけねえだろうからな。
しかし自分から洗いざらい吐き出してくたみたいだからもう用はない」



用はないと言いつつ視線は私に向けられていた。

じっと見つめられているのでちょっと気になって顔を上げると、その顔は真剣そのもの。

彼は目が合うと意を決したように口を開いた。