「助けが遅くなって大変申し訳ありません。
とりあえず止血しましょう。汚して構いませんのでこれをどうぞ」



赤星は肩を借しながら無表情で謝罪すると外に停車していた車に乗りこんだ。

そして助手席に乗った私にハンカチを渡してきた。



「いいえ……助けていただいてありがとうございます。もう、何が何だかで……」

「そうでしょうね、今回に関してはあなたは巻き込まれただけですから」

「そう、なんですか」



何も知らない設定だから、運転席に座る赤星の横顔を見て曖昧にあいずちを打つ。

ハンカチで傷口を押さえると脈を打つごとに切れた唇がズキズキと痛む。

痛みに顔を歪めながら、車を発進させた赤星に声をかけた。



「あの、スマホを貸してくれませんか?
絆に無事を知らせたいんです」



恐る恐る話しかけると彼は前を見たまま首を横に振った。



「失礼ですが許可できません」

「そんな……」

「会長を差し置いて勝手なことは許されないのです。
代わりと言ってはなんですが、西雲の本家に着くまで私の話をしましょう」



早く絆と連絡を取りたくて焦る私と対称的に、赤星は悠長に語り始めた。