「涼風、挨拶するのは偉いことだけど叩くのは違うよ。剛輝には謝ってね」

「はい、倖真(こうま)お兄ちゃん!ごめんね剛輝」

「うん、いいよ大丈夫」



繰り広げられる会話の中、最悪だ、琥珀の頭の中はそのフレーズでいっぱいだった。

ここにいる4人は、護衛もつけず気軽に出歩けるようなメンツではない。

まず剛輝、という細身の美少年。

この子は荒瀬組組長の側近である「川上剛(かわかみつよし)」の9歳の一人息子だ。


そして剛輝と同い年の涼風。14歳で長男の倖真。

この2人は“組長代理”の「荒瀬颯馬(あらせそうま)」の実の子どもだ。



「こんばんは、ママと一緒に来たのか?」



そして子どもたちに近づいてきた高身長のガタイのいい男。

茶髪のツーブロックの髪型で、日本人離れした高い鼻が特徴的。

目はスッキリしている印象だ。

間違いない。この男は───若頭補佐の鳴海憂雅。



「うん!そうだよ、ぼく流れ星見るの初めてだから楽しみなんだ」

「この子はね、去年熱出して来れなかったの。だから今日をすごく楽しみにしてたんだ」

「そうか、そりゃよかったな」

「すみません、“ご家族で”楽しんでいらしたみたいなのに」

「ああ、いやいや、親戚の集まりみたいなもんですよ。それに大勢で見た方が盛り上がりますし」

「はは……」



もう帰りたい、その言葉を飲み込んで貼り付けたような笑顔を浮かべた。

まさかこんな所で荒瀬組の連中と出会うなんて。

大体、こんなセキュリティの万全じゃない公園に子ども連れて来るなんて思わないし。

偶然にしても最悪だ……。




自分の運を恨み夜空を眺め考えていたその時、目線の先で流れ星がきらりと光った。