「琥珀、おかえり!ねえねえ聞いてよ」



自宅に帰ると、流星が興奮気味で足元に抱きついてきた。



「どうしたの?」

「明日の夜明け前にね、みずがめ座流星群がよく見えるんだって。おれ、見に行きたい!」



そう言うと意気揚々と、流星群の観測スポットをプリントアウトした紙を掲げた。



「いいよ、じゃあ今日は早く寝てから行こう」

「ほんと?やったぁぁ!星奈、いいって、流れ星見に行けるよ!」

「分かったぁ!何時ごろが1番見えるかしらべるね」



奥の部屋から、星奈の上ずった声が聞こえた。

そっか、星奈も楽しみにしてたんだ。

最近は我慢ばっかりさせちゃってるし、こういう日も必要だよね。





そう思い気を取り直し、翌日の未明にタクシーを利用して都内の展望台のある公園に向かった。

兄妹は誰もいない公園につくと、ふたりではしゃぎながら展望台をのぼった。



「あれ、ほかにも人がいるよ?こんばんは!」

「こんばんはー!流れ星見に来たの?一緒に見ようよ」



すると、子どもが2人、大人が2人で空を眺めていた。

どうやら先客がいたようだ。



「ほら剛輝(ごうき)、あんたも挨拶しなよ!」

「こ、こんばんは」



……ゴウキ?

おどおどと挨拶をする男の子の姿を確認した時、嫌な予感がした。

バシ、と強い力で叩いた女の子も見覚えがある。



涼風(すずか)、剛輝を叩くのやめてやれ。
涼さんと一緒で馬鹿みたいに力強いんだから」



……うっわー、嫌な予感的中した。

どうしてこうも会いたくない人間に会ってしまうのか。

自分の“引きの強さ”にめまいを覚えた。