あれ、目つきが変わった……まるで別人だ。

気が抜けてまじまじと相手の顔を見つめる。

すると彼は目を細めて笑った。



「これはたまげた。こんなにしっかりしてるお嬢さんだったとは。
大人気なく威嚇なんてして申し訳ない」



笑うとずいぶん若々しく見える男だな。

愛着のある笑みにほっとして、そして学んだ。

荒瀬の男はオンとオフの切り替えの幅がありすぎて心臓が持たないと。



「理叶、わたしの可愛い琥珀ちゃんに威嚇なんてしたの?
道理で緊張してると思った」

「ごめん、いつもの癖で」



すると、こちらの様子をじっと見ていた壱華さんが眉をしかめて睨む。

潮崎は優しい目で素直にごめんと謝ったものだから驚いた。

そして改めて、こんな恐ろしい男まで懐柔し、堂々と上に立つ荒瀬組の姐・壱華さんを本当にすごいと思った。



「おい、潮崎」



壱華さんに尊敬の眼差しを向けていると、組長が彼女の前に立ち塞がった。



「はい」

「立ち話もなんだ、玄関先で追い返すつもりだったが絆が帰ってきたなら仕方ねえ、上がれ」

「ありがとうございます」



大切な妻と会話されるがそんなに嫌だったのか、恐ろしい形相で命令する。

しかし潮崎はもろともせず笑顔で靴を脱いで玄関に上がった。

絆たちもその後に続いて靴を脱いだ。

私も履いていたパンプスを脱いで、しゃがんで揃えていたら、こそっと憂雅に話しかけられた。