惚れたら最後。

「ハァ……図太い男になりやがって」



組長は頭をかかえてため息をついた。

確かに、彼の気迫を受けて笑い飛ばせる人間などそうそういない。

様子をうかがっていると、組長の背後からひょっこりと顔をのぞかせた黒髪の美しい女性。

それは穏やかな表情の壱華さんだった。



「理叶、おかえりなさい」

「ただいま、姐さん。
なんだか、壱華の顔を見たら帰ってきたっていう感じする」

「チッ、壱華に笑いかけんな」

「志勇、わたしが理叶に笑いかけたの。
それにわたしはあなたの妻として、客人にそれ相応のお出迎えをしてる。それだけよ?」

「っ……」




かわいらしく小首をかしげる彼女。その悶絶級の可愛さに組長はなんと押し黙ってしまった。

それにしても壱華さんは今日もかわいすぎる。

あの帝王が嫉妬するのもよく分かるし、悩殺されるのもうなずける……。



「ははっ、仲睦まじいことだ、懐かしくて安心する。
……ところで、絆は?」



潮崎はそんなふたりに慣れているのだろうか。

甘ったるい雰囲気を自身の発言で止めた。

頃合いを見て、目の前に立っていた絆が足を一歩前に出し、憂雅はその隣を並行した。

私は少し迷ったけど後ろにぴったりとついて潮崎に近づいた。

するとその気配に気がついたのか、彼は勢いよく振り返った。