ダイニングテーブルにコーヒーの飛沫(しぶき)が勢いよく飛んだ。


「……」


絆は固まって顔を見合わせ、カップを置いて片手でティッシュを3枚取りテーブルを拭いていく。



「なんかごめん」

「いや、別にいいけど……急になんだよ。
てかヤクザの男がカタギの社長令嬢抱くなんて、今の時代にそんな危ない橋渡るかよ」

「じゃあ杞憂だったみたい。
どうも今日行ったホテルの総支配人の娘が、あなたにお熱みたいなんだけど」

「はあ?知らん、俺は琥珀以外興味がないんだ。
……お前に危害を加えようとする馬鹿女なら、多少の興味があるが」



絆はテーブルを拭き終わると、ティッシュをクルクルっと丸めてキッチンの裏のゴミ箱に捨てに行き、今度は濡らしたふきんを持ってきた。

そしてテーブルを拭こうとしてピタッと止まった。



「つまり、今日お前に突っかかってきた馬鹿がそいつか?」

「うん、可愛い顔してたけど性格が残念なお嬢様だった。
一方的に文句言われただけだし、永遠がかばってくれたから別にいいけど」

「良くはねえだろ、そういう女は凝りもせずちょっかいかけてくるから徹底的にやらねえと」

「そうだね、その通り。金持ちの女の逆恨みって怖いからさ。
それなりの対応は取らせてもらったよ」



そう言うと仕事用のスマホを取り出してSNSを開いた。