惚れたら最後。

事務所につくと組員がみんなデスクから距離をとってうろたえていた。



(ぼん)、これどうしましょう!?
新手のウイルスってやつですかい?」

「馬鹿!こんな身内ネタなウイルスあるか!」



中年のスキンヘッドの男が深刻な表情で言うものだから、絆の後ろで「ブフッ!」と吹き出してしまった。

絆はデスクに置かれた数台のパソコン、タブレット、スマホを眺めて肩を落とした。

全てのディスプレイに絆の幼少期の写真が張り巡らされていたからだ。

半裸のオムツ姿、変顔を披露する様子に、顔を真っ赤にして大泣きの写真。

スライドショーにしているのでコロコロと写真が変わっていく。



「写真のチョイスに悪意を感じる」

「どうしてこうなったか分かる?」

「……俺、何か悪いことした?」

「当たり。流星に温泉に行った時の動画寄越せって言ったでしょ。裸の私が写ってる動画」

「ああ、それか。嫌だったんだな、ごめん」

「まあ、それに比べたらこれくらい、ねえ?」

「マジで勘弁してくれ。事務所は来客もあるからこれじゃ示しがつかねえ。悪かったって」

「もうしないって約束するなら元に戻す」



するとあっちこっちに視線を泳がせて、決心したように目を合わせてきた。



「……今度はバレないようにする」

「はいダメ〜、1週間このまんまね」



反省の色のない彼にバッサリ一言。



「ぶっはは!変なとこで見栄はるなよ絆!」

「くっそ……」



腹を抱えて笑う憂雅さんに、本気で悔しがる絆。

大人びていても、若頭であっても、“こういうところ”はまだ19歳の少年なんだよなぁ、と変なところで納得した。