惚れたら最後。

「はっ……ケーキ美味い」



憂雅さんはあまりの美味しさに目を丸くした。

そして甘美な味を噛みしめ、少年のような笑みを浮かべて幸せそうだ。



「そんなにおいしいの?わたしも食べたい」

「いいぞ、好きなの取りな」



星奈はちゃっかり憂雅さんのケーキをひとつもらってぱくりと食べた。



「……おいしい!」



星奈はほっぺたを押さえて憂雅さんと笑いあった。



「これおいしい!わたしこれ取ってくる!」

「待って星奈、私も一緒に行くよ」

「うん、永遠お姉ちゃんいっしょにいこう?」



興奮した星奈は永遠を連れて席を立った。

連れてきてよかったとふたりの後ろ姿をみていると、憂雅さんが話しかけてきた。

スイーツ好きの青年の顔は、いつの間にか仕事の顔になっていた。



「さっきの女、逃げた後追いかけたらさ、案の定真っ赤な顔して琥珀の悪口喚いてたからなんかやらかすかもしれねえ」

「ああ、自分で社長令嬢とか言ってたもんね。
権力を盾に逆恨みとかもありえるかな」

「だなぁ、困るよなああいう暴走女。
とりあえず軽く調べておいたからデータ送る。後で目を通してくれ」

「さっすが憂雅さん、仕事が早い。ありがとう。
絆に飛び火するかもしれないからその前に鎮火させないとね。
ああいう女は掘り出したら色々出てきそう……ふふ」



ニヒルに笑う私に、憂雅さんはなぜかびっくりしたような顔をした。