「め、珍しいね、絆が運転してるの」



動揺を隠しきれず目が合わない琥珀は、俺が“そういう気分”だと思ったのかやんわりと距離をとる。

こんな大人びてるのに男慣れしてないところ、正直すっげぇそそるんだよな……。

そんな煩悩を打ち消すように平常心平常心、と心の中で唱え、適当に車を走らせた。



「割とする、眠れない夜とか気晴らしに」

「気晴らし大事だよねぇ、私もたまに夢の車運転してた」

「へえ……ん?そういや琥珀免許持ってんの?」

「持ってない。でも運転はできるよ」

「お前もなかなかの不良だな」

「ははっ、かわいいもんだよそれくらい」



ふわっと笑った琥珀にドキッとしながら声をかけた。



「で、どこ行く?」

「……絆の家行きたい。ちょっと話聞いて欲しくて」



間を置いて、ちょっともじもじした様子で見つめてくる琥珀。

それだけの仕草で“反応”してしまいそうだ。

気を紛らわすため「煙草取ってくんね?」とお願いし車内に置きっぱなしにしていた煙草とライターを取ってもらった。

運転しながら片手で煙草を取り出すと、琥珀がライターを顔に近づけてきた。



「お付けしますよ若頭」

「ぶっ……どこぞのキャバ嬢だよ」



軽くツッコミを入れながら火をつけて紫煙を(くゆ)らせる。

琥珀はその様子を見てなぜか固まった。



「どうした?」

「あ、ごめん。仕草が綺麗で見とれてた」

「……」



なぜか照れたように笑う琥珀。その笑みに、胸の奥で熱くなるものを覚え決意した。

決めた……抱こう、と。