惚れたら最後。

「琥珀はこの俺が一目置いてるんだからさ。
頭がいいし機転が利く、いい姐さんになると思うよ。
そんな逸材を変に探って傷つけちゃったらどうするんだよ、じいちゃんみたいに」

「……」



荒瀬志勇は『じいちゃんみたいに』のフレーズに顔色を変えた。

刹那は「あ、やべ」と父から顔を逸らした。



「刹那、それは志勇にとって地雷だからやめなさい」



にじみ出る彼の怒りのオーラは、苦笑いの壱華によって静まった。



「お前にとっても忌むべき過去だろ、壱華」

「もう気にしてないよ。20年前のことだし、お義父さんものすごく反省してたし。
それよりもう食べましょ」



ああ、確か壱華さんの一件で、荒瀬志勇は先代組長と仲悪いんだっけ。

そんな中々緊張感漂う部屋の中で、子どもたちは気にせず食べ出した。

だから私も箸でつまんでひと口いただいた。



「……おいしい」



すごく緊張していたけど並べられたおせちをひと口食べて驚いた。



「でしょー?このおせちね、力さんが真心込めて作ってくれたからおいしいよ」

「力さんって、厨房責任者の方ですか?」

「そうそう、料理上手で面倒見がよくって私も助かった〜。
でも刹那ったら力さんのリアクションが面白いからって、小さい頃はイタズラばっかりしてて」

「さすがに父さんにぶちギレられてからはやめたよ」



刹那はハハッ、乾いた笑いをして明後日の方向を見る。

そんな刹那を冷たく見るのは永遠と絆だった。



「刹那すごかったもんね。誰も思いつかないような悪質なイタズラばっかりして」

「それでも懲りねえからある意味尊敬するよお前には」



刹那は咎められても反論せず、バツが悪そうに苦笑い。

え、何やらかしたの。めっちゃ気になる。



「まあそういう所も志勇にそっくりで可愛かったんだけど」



壱華さんが笑うと、今度は荒瀬志勇が不自然に目を逸らした。



「え、まじで?」

「おばあちゃんか司水(しすい)さんに聞いてみたら?すっごいエピソード聞けると思うよ」



泣く子も黙る極道一家の裏事情に思わず笑ってしまいそうだった。