惚れたら最後。

「お邪魔します」




その後、私はなぜか荒瀬家とおせちを食べることになって組長宅にお邪魔していた。

荒瀬志勇がリビングのソファで足を組んで座り新聞を広げて凝視している。

割とラフな格好をしていて、完全にオフの姿に戸惑った。



「あれ、どうしたの琥珀」



すると、キッチンに立つ刹那が首をかしげた。



「一緒におせち食べようってわたしが誘ったの。
お茶とお箸もう1セット用意してもらっていい?」

「はーい、琥珀のためなら喜んで」




刹那は受け答えしながらニヤニヤと絆を見ている。

絆は挑発する刹那に向けて「はあ……」と深くため息をついた。



「刹那、あまり絆をからかうな」



そんな二人の仲に割って入ったのはまさかの組長だった。



「その揚げ足の取り方は腹立つからやめろ」

「そんなの今更じゃん、俺からかうの大好きだからさ」



カタギの人間なら震え上がるような気迫に刹那はケロッとしている。

改めて刹那という人間の図太さに驚いた。

彼を推す人間がいる気持ちもわからないことはない。



「母さん、いいお茶っ葉ってどこ〜?」



刹那の間延びする声を聞いて、こんなこと考えてる場合じゃないとキッチンに向かった。

しまった。極道の姐さんに食事の準備をさせてしまうなんて。



「すみません気が付かなくて。
私に手伝えることありますか?」

「ん?あらいいのよ、あなたはお客様なんだから絆と一緒に座って待っておいて」



ところが彼女は優しく笑いながら手を引くと、用意した誕生席が座らせた。

右隣には組長、左隣には若頭が座っている。


……やばい、気まずい。

さすがに組長の近くは気まずくてどうしようもなかった。



「父さん、琥珀のことガン見しすぎ」



すると、刹那が助け舟を出してくれた。