惚れたら最後。

「まあ俺はあの夜出会ったからいいもんね〜?
なかなか珍しい絆も見られたし」



子どもたちが手を洗うため洗面所に向かったあと、冗談をこぼす刹那に絆はぐい、と詰め寄った。



「琥珀に変な真似したらタダじゃ済まねえからな」

「はいはい。ったく冗談が通じねえ男だな」

「ふふ、それだけ本気なんだね」



永遠が嬉しそうに微笑むと刹那は「へぇ〜」と間の抜けた顔をして絆を見つめていた。



「じゃあ俺は向こうに参加してくる。
琥珀、帰りたくなったら連絡してくれ」



絆は若頭という立場上行事には参加しないといけないらしく、そう言うと立ち去って言ってしまった。

すると入れ違いに線の細い黒髪の美少年が入ってきた。



「お邪魔します、ケーキ持ってきたよ。……あ、こんにちは」



パッと見女の子に見えるほど整った顔立ちのその子は挨拶をするとさっと目を逸らして倖真の方に向かっていった。



「おかえり剛輝、ケーキありがとう」

「ううん、こちらこそ招待してくれてありがとう。
父さん宴会に行かなきゃいけないみたいだったから」



彼の父は荒瀬組組長の付き人である川上剛だ。

あの極道顔の父には似ても似つかないが、本当の親子である。

剛輝は大きな紙袋を倖真に渡して琥珀から離れるように後ろに隠れてしまった。



「ああ、この子人見知りで、歓迎してないわけじゃないから大丈夫ですよ」

「お兄ちゃん手洗ってきた!」



倖真が笑いかけてきたその時、涼風が流星と星奈を連れてリビングに走ってきた。



「そっか、そしたら皆でケーキ食べようよ」

「えぇっ!?ケーキ?やったやった!」



流星は嬉しくてぴょんぴょん跳んでしまいには永遠に飛びついた。



「あ、ごめんなさい。流星、人のおうちなんだからそんなにはしゃがないで」



調子に乗っている流星を落ちつかせようすると、彼女はゆったりとした口調で流星に話しかけた。



「いいですよ。ねえ流星くん、甘いもの好きなの?」

「ケーキは好きだよ!“とくべつかん”があって!」

「ふふ、そうだね私も好きだよ」



初対面の子どもに優しく接する彼女を見て、なんとも言えない奇妙な感覚を覚えた。

親がヤクザとは思えない子だな……いい子過ぎる。

きっと相当苦労してるんだろうな。

じっと見つめていると不思議そうに首をかたむける永遠に、私はそっと笑いかけた。