惚れたら最後。

昨日とは違う茶髪のウィッグとカラコンを付けて別人になりすまし、兄妹と共にショッピングモールを散策していた。



「うわぁ！ぼくぜったいこれにするよ、このゴールドのランドセル！」

「はあ？しゅみわるいよ。あたしも無難に赤にするから、黒にしときなよ」

「やーだね！好きなことに妥協はしない。だよね、“ママ”」

「うん、そうね」



嬉しそうにランドセルを抱える流星と星奈も、メガネをかけたり帽子を深くかぶったり変装をしている。

今回私はこの子たちの母親を装っていた。



「好きなの選んでいいよ、見ておいで」

「はぁい……わっ！」

「あ、ごめんなボク、ケガはないか？」



変装していれば、万が一が起こった時に気が楽だ。

だからイレギュラーな事態が発生しても焦らなくて済む。



「うん、大丈夫！ぼくこそよそ見しててごめんなさい」

「すみませんうちの子が……お怪我はありませんか？」



だが、走り出した流星とぶつかってしまった相手の顔を見たとたん、流石の私も肝を冷やした。




この男……荒瀬組の幹部組織の若頭、“網谷”凛太郎だ。