惚れたら最後。

クリスマス当日の夜。

荒瀬組御用達の高級レストランに連れてきてもらって、ふたりきりの楽しい時間を過ごした。

帰りの車のドライバーは日中子どもたちを遊園地に連れて行ってくれた憂雅さんだった。

私は憂雅さんに今日の様子を聞いた後、絆にチラッと目配せした。



「そういえば、この前言ってた大学に行ってやりたいことなんだけどさ」

「ん?ああ、そういえば聞いてなかったな」

「行きたい大学、東計大(とうけいだい)なんだ。
なんでも裏で政治家とやり取りがあるらしい。
内部調査をしてその弱みを握れば繋がりも消える」



東計大とは、歴史ある日本屈指の私立マンモス校だ。

その大学は最近悪い噂が流れていた。



「コネ入学もさることながら、賄賂の疑惑さえある。
で、しかも政治家はどうやら暴力団追放を掲げて当選したらしくってさ。
荒瀬からしたらたまったもんじゃないでしょ?」

「……」

「荒瀬は『表』と『裏』の仕事を全く別物として扱っているから警察も動けないだけ。
それに歴史が長いからね、『表』の企業が有名になりすぎて政府も排除できないんだよ。
万が一排除してしまったら日本経済が揺れる」



ヤクザには『表』と『裏』がある。

表は一般企業に扮していて、かつては金融、不動産、人材派遣と至る所に存在していた。

暴対法によって取り締まりが厳しくなった今、荒瀬は政府にバレないように考え抜かれた金のやり取りだけを続けている。



「少なくとも、荒瀬組は日本にとっての必要悪だ。
荒瀬を守るためにも、情報屋梟は存在し続ける」


「……かっこいい」



宣言すると感銘を受けた憂雅さんが呟いた。

ちなみに彼は私が情報屋梟であることは知っている。



「琥珀、イケメン過ぎない?尊敬しかないんだけど。
こんな頼もしい参謀がついてくれるなんて荒瀬は安泰だな、なあ絆」



興奮気味の憂雅さんは絆に同調を求める。



「ああ、琥珀は俺の自慢の女だよ」



私が褒められたことを自分のことのように喜ぶ絆。

私はちょっぴり鼻が高かった。