「ちっ、またこの依頼か。性懲りないねぇ」



翌日、何台もの電子機器が並ぶ近未来的な自室で、依頼を確認しながらイライラしていた。

依頼は山ほどあるが半数が荒瀬絆についてばかり。

『荒瀬絆がバーに来る時間帯を教えて!』『荒瀬絆は1度抱いた女は二度と抱かないって本当?調査して!』──など、同じような文面が並ぶ。

まあ、あの男は私生活すべてが謎だから、知りたいって思う気持ちは分からないことも無いけど。

だけどわざわざ自分からヤクザに抱かれたいなんてイカれてる。



「まったく、あたしは便利屋じゃないっての。
適当にはぐらかしとくか……いや、完全無視でいいや」

「琥珀ってイライラしたらママにそっくりだよね」



ぎょっとして振り返ると、パジャマ姿の流星が真後ろに立っていた。

ちなみに流星と星奈は夢のことを本当のママだと思っている。

まあ、実際養子縁組をしたわけだから戸籍上は母親だけど。



「……流星、おはよ。星奈は?」

「まだ寝てるよ、聞いてよ琥珀、あいつ寝てる時におならしたんだ。
ブウッて、でっかいおならでさ、あはは!」

「はは、我が家は平和だねえ。
さて、そろそろ朝ごはんにしよっか。
ご飯食べたら来年から流星も星奈も小学生だし、ちょっと早いけどランドセル見に行こうよ」

「え?まじ!?おれ、おれね、金ピカのカッコいいやつがほしい!
早く星奈起こしてくる!」



飛び出していった流星を横目に、琥珀は大きく伸びをしてからダイニングに向かった。