惚れたら最後。

「梟ともあろう闇の住人が?
一人の男に惚れ込んだってのか?」

「あなただってわたしに惚れちゃったんでしょ?
人生どうなるか分からないよ」



すかさずフォローを入れた母さんを口を開けて見つめる親父。

先ほど琥珀を問い詰めた人物と同じなのかと思うほど表情が豊かだ。

やがて親父は琥珀色の瞳を真正面から捉えて言った。


「不可思議な巡り合わせってのは確かにあるからな。
いささか信じられないが……まあ悪い目はしてねえ、自由にしろ。
本当に情報屋なら頭も回る、絆を支えてやってくれ。
ただし荒瀬を裏切ろうものならお前の命はないと思え」

「はい、重々承知しております」



低くうなるような怒りを含ませたような声音。

しかし琥珀が前を見て返事をすると厳しい表情を崩した。



「ほう、俺の脅しが通用しねえか。上等だ」




上等だ、と言ってニヤリと笑う親父を見て心の底から安心した。

親父は人を受け入れる時、相手の人格を試すような真似をする。

いくら実の息子で若頭といえど、組長の命令は絶対。

頭に受け入れてもらえるかどうかが一番の心配だったが、琥珀は父の試練をクリアしたと感じて安心した。



「私の身の上話を聞いた上でお許しをいただきありがとうございます。
最後にお願いがあります」



琥珀はゆっくりと深く礼をして畳を見つめながら申し出た。



「私が梟であるということは、ここにいるみなさん以外秘密にしていただきたいのです」



そう言われ親父は少し考え、顎を指先で支えながらうっすらと笑った。



「いいだろう、こちら側も今お前を失うと状況が悪化する可能性がある。
今後の動きについては絆を通して伝えてくれ」

「はい、ありがとうございます」



深く頭を下げる琥珀とともに両親に挨拶して、狼の間を後にした。