惚れたら最後。

「お前はなぜ俺に近づいた」

「黒幕を速やかに排除しなければ荒瀬組が危険だと思ったからです。
もたもたしている時間はない。この場で“とある許可”をいただきたい。
それゆえに直談判を申し立てに来ました」

「そのために絆を利用したのか?」



鋭い問いかけに、痛いところを突かれたと感じた。

まさかそんな質問をされるとは思っていなかった。

ゆっくりと首をひねると、絆が不安そうな顔で私を見ている。



「彼に出会ったのは……単なる偶然です。
信じてはもらえないでしょうけれど」



好きな人にそんな顔はさせたくなかった。

しかし背に腹は変えられない。

もうこの道は戻れないのだ。

部屋には沈黙が広がり、少しの間視線を下にして畳を見つめていた。

きっと荒瀬志勇は恐ろしい表情を向けているだろう、それでも伝えなければならないんだ───と意を決して顔を上げた。



あれ……?

しかし、なぜか彼は微妙な表情で固まっていた。

よくよく観察すると、帝王は妻と息子に穴があくのではないかと言うほどじっと見つめられ身動きが取れなくなっていた。

すると片腕を上げた彼は、何かを静止するように手のひらを見せた。



「分かった、分かったから二人そろってそんな顔するな」