「絆がいいなら、お言葉に甘えようかな。
けど、本当にいいの?」

「いいに決まってる。俺の親父なんて有無を言わせず母さんを家に連れ込んで同棲してたらしいからな」

「交際0日で同棲したって話?本当だったんだ……」



荒瀬志勇のエピソードに驚いたその時、絆のスマホに着信があった。

絆は表示された画面を見て怪訝な顔をすると、私から離れて通話を開始した。

一瞬見えたディスプレイに映された名前は───荒瀬志勇。



「……誰から聞いたんだ?」



わざわざ荒瀬組の組長から電話なんて。

なんの話だろうか。



「ああ、そっちか。てっきり刹那かと。
……いやあいつ琥珀と鉢合わせたからさ」



私の心配をよそに、絆は感情を抑えきれないといった様子でニヤリと笑った。

……私の話?やっぱり荒瀬志勇にも届いてたか。

とりあえず、絆の反応から見て荒瀬志勇が怒ってないみたいでよかった。



「うん、琥珀って名前のすっげえ美人。今ここにいるよ」



様子を伺っていると、絆は白い歯を見せ笑ってこっちを見た。

その褒め言葉と綺麗な笑みを見て、かっと顔が赤くなるのを感じた。

何度見てもその完璧な笑顔には慣れない。



「ああ、俺もそうしようと思ってた。
……3日後?うん、分かった」



そう言って通話を終えた絆は、私に近づきながら口を開いた。



「今のは親父だ。3日後、琥珀を本家に連れてこいと言われた」

「……は?」

「たぶん興味本位だ。心配しなくていい」



……ちょ、ちょっと待って。急展開すぎない!?

そこまで話が進んでいたなんて。

とんとん拍子に進みすぎて逆に不信感に見舞われる。

このタイミングで荒瀬志勇に会えることは幸運であり、そして不運でもあった。



「それが終わったらこっちに越してこないか?
お前の負担にならないよう、費用は荒瀬が負担する」

「ありがとう……」



絆が笑って礼を言い、そして決意した。

どちらに転ぶとしても、全て曝け出してしまおう。

私は拓海さんみたいに上手に演じきることはできないから、と。