どど、どうしよう。このままじゃ、賭けそのものが流れてしまう可能性がある。
そんな私の胸の内など知らない千住サマは、しばらく顎に手を当てて静止していると。
「……じゃあ、俺が勝ったらサマ呼びやめろ」
賭けるようなものでもない。
ただ、言えばいいこと。
……けれど、私にとってそうじゃないことが、きっと彼には伝わっている。
なんの意図で、どんな意味があってそんなことを言ったのかはわからないけど。
……負けられない。負けたくない。
「いいですよ。やりましょうか」
たかが一緒の家に帰って、同じ卓でご飯を食べる同級生。
だからこそ、保っていなければならない一線というものがある。
保っていないといけない、ものがある。
もっと違う出会い方をしていければ、何か変わっていたかな。
友達っていう枠組みに入ってた?
それとも、無関心の対象だった?
……そんなのぜんぶ、そうじゃなくてよかったことになっていた。