……今日だけ、いまだけ、なんて言葉、つかいたくなかったんだけど、な。
「なま、え……」
「一回名乗ったハズだけど」
「わすれた……」
「地味にひどいな」
ひどい、なんて言葉を使っても、嫌がってる素振りすらない。
……そんなだから、つけこまれるんだよ。
なんでも言ってもゆるされちゃうなんて、思ってしまう。
「カヤ。漢字は、夜伽を反対にしたヤツ」
「か、や」
そういえばそんな名前だったな、なんて思いながら。
……自分から引いていた線を、一歩、超えた。
サマ、なんてつけておいて、何を突然。
……でもさ、ほら。
わたし、今日、熱、出したから。
ぜんぶ、熱のせいにしてしまおう。
「……なに」
目が、ほそめられた。
それは、睨む時特有のものではなく。
……やさしい、光が宿ったときのもので。
おもわず、手を、伸ばしてしまった。