私は月の出る夜が嫌い。

現実を突き付けられて胸が張り裂けそうな思いをし、私は暗がりの中、声を押し殺して枕を濡らした。


だけど、分かってる。

何もしない自分が悪いってこと。

私自身が選んだ道なんだから、受け入れなければいけないってこと。


あなたの指が彼女に触れ、

あなたの腕が彼女を捉え、

あなたの声が彼女を呼び、

そして、あなたの影と彼女の影が重なる。


分かってるのよ。

だけど、頭では理解しているのに心がついていかない。

一体何人の女とのその光景を見たことだろう。


我慢し続けてズタズタに打ちのめされた心は……限界だった。


――これでよかった。


高校を卒業した私たちは、初めて別々の進路に進んだ。


あなたの傍にいたいと願いながらも、私から離れていった。

毎日のように合わせていた顔は、まったくと言っていいほど合わせなくなった。

相変わらず、月の出る夜にはあなたの部屋から彼女との情事が見えるわけだけど。


あなたの影しか見ない毎日に、私のあなたへの想いもぼやけてきた。

このまま、私の中から綺麗さっぱり拭いとれると思っていた。


そう思っていたのよ……。


なのに、急転直下の出来事が起こったのは、南の空高く満月が光輝く夜のこと。