すると年明け後程なくして、その時は訪れた。


 毛利勢の挑発に引っかかった尼子の先鋒隊が、戦の口火を切る。


 最初は小競り合いだったが、後がない尼子軍は次々に毛利軍に攻撃を仕掛けていった。


 戦闘が開始され、尼子本隊が総攻撃をかけようか思案し、注意がそちらに向いている隙を見計らって。


 私は尼子本隊の背後を突くよう軍勢に命令を下した。


 毛利に総攻撃を仕掛けることで頭が一杯だった尼子本隊は、背後の防御が疎かになっていて。


 大内軍の奇襲攻撃に驚き、本陣は混乱をきたした。


 ついに尼子本隊は総崩れとなり、当主の尼子晴久の首をもう少しの所で奪えそうだった。


 だが総大将の尼子久幸が盾となって晴久を守り、壮絶な討ち死にを遂げている間に晴久は逃れてしまう。


 命からがら逃れた当主・晴久は、尼子軍精鋭部隊の新宮党と緊急会議を行い。


 その夜のうちに撤退を開始することで意見は一致した。


 この日の戦で敗北を喫し、総大将の久幸もすでに討ち死に。


 すでに危機的状況なのに加え、もしもさらに御屋形様が兵を率いてきたら、尼子家は壊滅的となったであろう。


 手遅れになる前に……と、夜の闇に紛れて軍勢を撤退させることにしたのだ。