厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

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 御屋形様から離れ、戦場で年は明けた。


 天文10年(1541年)は大内軍、そして尼子軍のにらみ合いで始まる。


 尼子本隊が毛利元就の籠もる吉田郡山城に総攻撃をかけるようなことがあれば、戦力の差は歴然ゆえ危機的状況に陥る。


 それを避けるために私は軍勢を指揮し、毛利側に総攻撃をかけられないように尼子軍を牽制し続けた。


 篭城する毛利軍は兵糧も豊富で、抜け道より新たに食料調達も行なっているようで、士気に陰りは見えない。


 逆に大軍で敵地にまで遠征してきた尼子軍は、冬場を迎え、食糧不足が深刻化してきた。


 領国からの補給路も雪に閉ざされ、上手く調達できない状態が続く。


 大軍を要しながら、わずか数千の毛利勢を攻め落とせない現状に、焦りの色が濃くなっている。


 時が経てばますます尼子の不利な状況となると読んだ私は、時を待った。