厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

 「今回の尼子の総大将は、尼子久幸(あまご ひさゆき)ですね。当主の晴久は本陣に身を潜めており、最前線にはあまり姿を現しません」


 先代の経久は高齢により家督を孫の晴久に譲った。


 総大将の久幸は、先代・経久の弟で歴戦のつわもの。


 「経久の弟・久幸。そして経久の次男・国久(くにひさ)は、尼子軍の精鋭部隊・新宮党(しんぐうとう)を率いていますね。これは厄介です」


 「そうだな。いたずらに犠牲を増やさぬよう、じっくり作戦を練らねば」


 さっさと勝利して、御屋形様の待つ周防へと帰りたかったが。


 功を急いでは数に勝る尼子の返り討ちに遭ってしまう可能性がある。


 御屋形様と離れて過ごすのは寂しかったが、勝機を確実に掴むまでしばし陣中で時を過ごさなければなさそうだ。