厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

 「陶どの、この度はまことにかたじけない」


 しばし相手の陣形を確かめつつ、初冬の風景を眺めていた私に礼を述べたのは、毛利隆元。


 元就の嫡男である隆元は、御屋形様の命により、この度初陣として大内軍に加わっていた。


 尼子に攻められ絶体絶命の実家を救うための軍に加わることができて、非常に喜んでいる。


 「この度は毛利家存亡の危機ですので、御屋形様にお願いして、陶どの率いる軍勢に加えていただきました。まだ未熟ではありますが、実家のみならず大内家のお役に立てるよう努力いたしますので、色々とご指導よろしくお願いいたします」


 二歳年上の総大将である私に、隆元は丁寧に述べる。


 その純粋な瞳の輝きに、一瞬私は気圧される。


 彼のこういうひたむきなところを、御屋形様も非常に気に入られているのだ。


 私はまた嫉妬している。


 「……共に力を合わせて、尼子の軍勢を駆逐してみせよう」


 そう答えて思わず目を逸らしてしまった。