厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

 天文九年、九月。


 私は総大将として、大内軍一万を率いて。


 尼子軍三万による攻撃に耐え、毛利元就が籠もる吉田郡山城(よしだこおりやまじょう)救援へと出陣した。


 先頭で手綱を握る私の背後には、一万の大内軍が連なる。


 「あちらが陶の殿様じゃ」


 「あのお若さで総大将とは」


 町民たちが群がり、軍勢を見送っている。


 「見よ、鎧や馬のきらびやかさを」


 「豪勢な武具に見劣りせぬ、見目麗しい武者ぶりよのう」


 見送りに集まった町民たちが、口々に私を褒め称えているのが耳に入る。


 時折それらの声に対して視線を向け、微笑んで見せると歓声が湧き上がる。


 そして……見えなくなってしまう前に、振り返って御屋形様を確認する。


 御屋形様もまた、私を見送りに館の門の外まで出ている。


 私と目が合った瞬間、そっと頷いた。


 大丈夫だとでも告げるかのように。


 私は総大将としての重圧よりも、必ず御屋形様へ勝利をお届けするという使命感に燃えていた。