厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

 「何を馬鹿なことを」


 御屋形様は腹を抱えてお笑いになる。


 「そんな嫉妬に身を焦がすくらいなら、その情熱で私をもっと焦がしてくれ」


 「御屋形様」


 「いいか、若輩のお前を総大将に任じ、一万の軍勢を与えるという異例の待遇は、全てがお前の将来に対する箔付けのためだ」


 急に真剣なまなざしで述べ始める。


 「毛利の居城は、天然の要塞だ。毛利勢数千が尼子勢三万に対し善戦している。これに大内からの救援一万が加われば、間違いなく勝ち戦となろう」


 「……」


 「勝利が約束されている戦の総大将に、お前を任ずるというわけだ。お前がいつもの力を発揮すれば、勝利も時間の問題。そうなればお前の功績は、大内家内外に響き渡ることとなろう」


 御屋形様は勝利を信じて疑わないようだけど、


 「本当に……そう上手くいくのでしょうか」


 「何を案ずることがあろうか」


 御屋形様は強く私の肩を抱いて、こう告げた。


 「お前は私が作り上げた最高傑作だ。恐れるものなど何もない」