厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

 天文20年(1551年)10月。


 九州に逃れていた元恋敵・相良武任(さがら たけとう)を暗殺。


 私が謀反を成功させ、御屋形様がもうこの世にはいらっしゃらない今となっては。


 命を永らええることは不可能であると、相良もだいぶ前から悟っていたようであるが。


 ……ほぼ同時期に、御屋形様の寵愛を受けたおさいの方が逃れる寺を突き止め、身柄を確保。


 かつては殺してやりたいくらい憎んだ女だが、なぜか命を奪うことはできなかった。


 泣きながら命乞いをする惨めなその姿に、氷が解けるように殺意も失せてしまった。


 命は救う代わりに、出家を命じた。


 大内館で最も美しいと讃えられたその黒髪が無残にも切り落とされた瞬間、私はようやく勝者としての喜びをかみ締めることができた。


 これからは御屋形様と亡き息子の菩提を弔いながら、一人寂しく生きていかねばならないだろう。


 御屋形様のご寵愛を笠に着て、大内館で権勢をほしいままにしていた時の何倍もの長い孤独な時間を、これから寂しく送らねばならぬ。


 それが私からの、ささやかな復讐。


 もしかしたら命を奪うよりも残酷であるともいえる、最高の復讐。


 私から御屋形様を奪った罪。